
2025.10.29

昨今、関心を集める大学の財政難。歴史があり学生数の多い名門私立大学においてもその状況は変わらない。積極的な寄付活動の必要性を認識しつつも、現状から脱却できず悩みを抱えているケースが少なくないのだ。
関西大学では、2023年に寄付業務を専門とする募金室が事業推進局へと移管された。外部の伴走支援を活用して新たな視点や考え方を取り入れながら、守りから攻めへのファンドレイジングの転換を目指している。
なぜ外部の力を借りる必要があるのか? 得られたものは? 本インタビューでは、事業推進局 募金室 局長の服部 真人(はっとり まさと)さん、次長の鳥海 健(とりうみ けん)さん、山本 真由美(やまもと まゆみ)さんに話を伺った。

―3ヶ月にわたってファンドレイジングの戦略設計をサポ-トさせていただきました。READYFORにご相談いただく前の状況や当時の課題感について教えてください。
服部:国立大学の財政難というのは認知されていると思いますが、私立大学でも「多様な収入の確保」は大きな課題です。補助金も減少傾向にあり、このまま漫然と過ごしているだけではいずれ立ち行かなくなるのは容易に想像できます。そのような社会的な背景もあり募金室が現在の体制になって組織的にも寄付に力を入れていこうという流れの中、自分たちでも試行錯誤を重ねてきましたが、人的リソースや専門的なノウハウが不足しており、限界を感じていました。
一方で支援者向けの交流会などから、募金活動はまだまだ伸びしろがある取り組みだという肌感覚がありました。組織としてさらに積極的に進めないといけないと考えていたのが当時の状況です。
山本:日常業務の中での課題、例えば学内の手続きなどは少しずつ整備をしてきましたが、寄付の取り組み全体を抜本的にテコ入れすることに関しては、もう一歩踏み出したいけれど、どうしたらいいのか分からずに行き詰まっていました。

―そんな中でREADYFORファンドレイジングサービスを選んでいただいた決め手は何でしょうか?
鳥海:寄付に注力するのであれば大学内でファンドレイザーの方を雇うという方法もありますが、そのやり方が本学の風土になじむのだろうかと懐疑的なところがありました。お互いによく知らないままいきなり雇用することへのリスクもありますし、関西大学は愛校心の強い職員が多いので、それを活かした取り組みができないかと模索していたんです。
ですからREADYFORさんにご相談をした時に「雇うのではなく、外部の力を借りる」という方法があると聞いて、腑に落ちた気がしました。あくまでも主体は自分たちで、手が回らない部分や専門知識・経験が足りない部分を外部の方に伴走してもらいながら進めていく方法なら、本学の風土にフィットすると感じたのが決め手の一つです。
服部:中長期的な戦略や短期的な戦術に関しては、外部の専門的な知見も取り入れたいと特に感じていた部分なのですが、その点でもREADYFORさんは他の学校法人や他業界との実績も豊富で説得力がありました。

―戦略設計のプログラムを実施してみて良かったことや印象に残っていることがあれば教えてください。
山本:特に印象的だったのは、「関西大学とは何か?」という問いを改めて考えたことです。寄付の戦略づくりの中で、そこまで踏み込むとは思っていなかったので驚きました。しかしその過程の中で寄付者の皆さまをはじめとするステークホルダーにどう「関西大学らしさ」を伝えるかを見つめ直すきっかけにもなり、大学への理解がより深まったと感じています。

鳥海:たしかに、この戦略設計を通して改めて「関西大学らしさ」に気づけたことは大きな収穫でした。常々、寄付に関してだけでなく積極的かつ効果的な広報が本学の課題だと感じていました。PRができない=特色がないという考えに陥りがちなのですがREADYFORさんを交えて議論を重ねる中で「特色がないのではなく、バランスよく時代の変化に適応していくことこそが、関西大学らしさ」という強みを再発見できました。
自分たちでも同じようなワークを行うことはありますが、READYFORさんという外部の視点が入ることで課題の掘り下げ方や切り口が変わりました。寄付という取り組みにとどまらず、大学全体の広報の課題解決にも繋がる示唆を得られたと感じています。

―プログラムを通して、具体的にどのような成果が生まれましたか?
服部:寄付メニュー全体の改編プラン案の策定が大きな成果です。以前からメニューの分かりにくさは学内や支援者の方からもご指摘いただいていたので、ずっと何とかしたいと思っていましたが、手付かずの状態でした。今回、READYFORさんと一緒にメニューを全て棚卸しして整理したことで、全体像がより明確になったのは良かったです。
また、その後、広報施策の検討においてはステークホルダーマップを作って、誰に・何を・どう伝えるかを可視化することができました。これまで見落としていたステークホルダーの存在や、ステークホルダーによって寄付依頼のアプローチ方法を変えるといった新たな気づきが多くあり、ここでも外部の視点に助けられたと感じています。

―外部のサポートを取り入れて、手応えを感じたことはありますか?
鳥海:ファンドレイジングという取り組みは、内部の者だけで進めていると、どうしても孤軍奮闘のような構図になりがちですが、外部の方が入ることで雰囲気が大きく変わった気がします。内部への共有の場にもREADYFORさんに同席いただきましたが、理事長への報告の際も、単なる結果報告ではなく、次の展開を見据えた建設的なディスカッションの場に変わったと感じました。
服部:新たな企画や提案などの学内の合意形成においても、外部の存在はとても影響力があると感じました。READYFORさんは知識をお持ちですし、エビデンスの裏付けがしっかりしていますので、説得性と相まって推進力が高まると思います。

―全体方針と寄付メニューが整った今、関西大学 募金室の皆さんの今後の展望を教えてください。
山本:戦略設計のプログラムを通して、これまでの募金の取り組みで足りていなかったなと気づいたことが二つあります。一つは、寄付者の皆様に対して関西大学の思いやビジョンをしっかりとお伝えするということ。そして、いただいた寄付金でどのような成果や変化が生まれたのかご報告することです。これからは「伝える、報告する」を強化して、今よりももう一歩、寄付者の方に近づいてコミュニケーションが取れるようにしたいです。
鳥海:現在は、設計した戦略を実行するフェーズに向けて準備をしているところですが、私たちだけではできることには限りがあります。寄付を集めるにしても、ターゲットによっては、私たちではなく、より適切な担当者や部署からお話した方が効果的な場合もあります。ここから先は、全学的な連携が欠かせなくなります。大学全体を巻き込みながら、ファンドレイジングを“組織の文化”として根付かせていきたいと考えています。
服部:今まさに戦略に基づいた取り組みを進めつつあります。先ほど話にも出ましたが、今回のREADYFORさんとの取り組みをきっかけに、寄付メニューの全面リニューアルも推進していきたいと考えています。これまでなかなかできていなかった渉外活動も積極的に行えるよう、これを機に組織的に「攻めのファンドレイジング」に挑戦していきたいですね。

―同じような課題を持っていらっしゃる団体さんへのメッセージはありますか?
山本:私立大学ですと寄付を専門とする部署があっても中にいる人が他の業務と兼務されていることも少なくないですし、人事異動で担当が変わることもしばしばあります。そのため、内部でどうにかしたくても「人手が足りない」「何からやったらいいか分からない」と悩んでいる方は多いと思いますが、外部支援という選択肢があることをお伝えしたいです。READYFORさんとご一緒すれば「自分たちが今どの地点にいて、これから何をすべきなのか」という道筋が見えてくるはずです。
鳥海:大学や学校法人のファンドレイジングに関する専門的な知見をお借りすることができるので、寄付の取り組みは続けているものの、「知識やノウハウが蓄積できていない」と感じている方にもおすすめです。

服部:外部の方と組むことで新しい視点が入るので、これまで見えていなかったことや見落としていたことに気づけます。まず話を聞くだけでも得るものがあると思います。
今回私たちはファンドレイジングの戦略設計をサポートしてもらいましたが、READYFORさんは一緒に課題を整理したり戦略を考えてくれるだけでなく、アウトプットの最後の最後までしっかり伴走してくれました。東京から訪問いただき対面で議論する場面もあり、近い距離感でチーム一丸となって進めることができました。外部の知見やエビデンスに基づいたアウトプットができるので、様々なシーンで合意形成する際にも有用です。現状を変えたいと感じている団体の方は、READYFORさんのサービスを大いに役立てることができるのではないでしょうか。

取材:久田 伸(READYFOR ファンドレイジングサービス部門)
文責:宗村 奈津(READYFOR ファンドレイジングサービス部門)
撮影:其田 有輝也
担当 ファンドレイザー
久田 伸
エキスパートキュレーター / 准認定ファンドレイザー
千葉大学 教育学部卒。広告会社で企画・制作、CEO室立ち上げ、人事マネージャー、サービス開発責任者を経てREADYFORに参画。ファンドレイジングサービス部門の立ち上げから、サービス開発、組織開発に従事。国立科学博物館の「地球の宝を守れ」プロジェクトでは国内クラウドファンディングにおいて最高額・最高支援者数を記録*。(*2024年7月時点)
担当 ファンドレイザー
宗村 奈津
キュレーター / コンサルタント
大学を休学し、青年海外協力隊として発展途上国で活動したのち、PR代理店に入社。PR コンサルタントとして、メディアへの露出戦略、そこから紐づくPR企画の提案、その後のプロジェクトマネジメントまで一気通貫で実施。READYFOR参画後はファンドレイジングをする上でのPR戦略を中心にコンサルティングを担当。
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