READYFOR
FUNDRAISING SERVICE

2025.07.08

資金調達の前にやるべき事がある。merry attic、事業が躍進した1年の原点とは。

「社会的に意義のある活動なのに、お金が足りない」

「資金調達をしたいけれど、何から始めればいいか分からない」


先進的な子育て支援事業を展開しながらも、その活動の安定的な財源確保に悩んでいたmerry attic。彼らがREADYFORと共に資金調達の前に取り組んだのは、自分たちが本当に解決したい社会課題を見つめ直し、事業の価値を言語化すること。


そのプロセスから得た気づきとは? ファンドレイジングの戦略設計から実行伴走までを振り返りながら、merry atticの代表 上田 馨一(うえだ かいち)さんと副代表 / 事務局長 石原 悠太(いしはら ゆうた)さんに話を伺った。

▲merry atticの代表 上田 馨一さん(写真左)と副代表/事務局長 石原 悠太さん(写真右)。埼玉県戸田市のこどもショートステイ merry attic near にて

新規事業に挑戦して3年。見えてきたニーズ、足りなかった資金


―merry atticさんとは1年以上の時間を共にして資金調達のサポートをさせていただいていますが、その前はどのような状況だったのでしょうか?

上田:READYFORさんに初めてお会いしたのは、既存の「学童事業」の他に新しく「こどもショートステイ事業」を立ち上げて少し経ってからです。京都市で戸建てを借りて、宿泊を伴ってお子さんを預かり始めて3年目でした。

石原:学童事業の方は補助金制度が確立されており、堅実な事業として運営できていました。一方で、こどもショートステイ事業は既存制度の課題を解決する実証実験のような形で始めた事業です。その当初は、こどもショートステイが何となく必要そうだという認識で、誰のどんなニーズに応えているかが手探りのなか動いていました。


▲京都のショートステイ外観

上田:ただ事実として、断らないといけないほど利用希望が殺到していたんです。こどもショートステイの必要性を確信していたものの、既存の制度では補助金の対象にならないことから、運営資金の不足が一番の問題でした。

石原:家賃や人件費等を賄うことができなかったため、慢性的に赤字で、年間に数百万円を持ち出しで運営していましたね。

―そのような状況の中で、READYFORファンドレイジングサービスで戦略設計に取り組もうと考えた理由を教えてください。

石原:意義ある事業をしているのに、お金がない。応援してくれる人がいても、何をどうしたら「寄付」につながるのか分からない時に、READYFORさんをご紹介いただきました。

上田:最初は月額寄付や法人寄付を検討していたのですが、READYFORさんにお会いしたら「資金調達の前にやるべきことがある」と示唆をいただいて。どんな手段で資金調達をするにせよ、まずは事業の価値を整理すべきではないかと。そのステップを明確にしてくれて、こんな視点もあるんだなと学びになりましたし、やはり知見をたくさん持っていらっしゃると感じました。

あとは、自分たちの事を知ろうとしてくれた姿勢と熱量が印象的でした。団体だけでなくメンバーにも興味を持ってくれて、個人を理解しようとしてくれた事が決め手の一つです。

戦略設計プログラムの対話が導いた、“伝わる言葉”


―ファンドレイジングの戦略設計では約3ヶ月間みっちり議論を重ねましたが、振り返ってみて印象に残っている事はありますか?

上田:事業価値の言語化のワークには苦労しましたが、とても印象に残っています。私たちのようなNPO団体は、そもそもその事業が良い事だと信じて疑わないから、改めて人に伝わるように言語化するのが難しいこともあるんです。

石原:社会課題についても、課題だと私たちは思っているけれど、それを人に説明しようとすると論理構造が少しおかしかったりして、何となく伝わらない。今回、事業価値と課題の言語化にしっかりと時間をかけていただいたことで、ふわっと理解していたものが明確な形になり、「解像度」が上がりました。今では誰に何を聞かれても、自分たちの事業の価値を語れます。

―戦略設計をする前と後で、変化を感じる事はありますか?

上田:例えば、講演会などで話す内容が変わりましたね。アンケートの反応も明らかに違います。共感が生まれている実感があるんです。訴求力が段違いに上がりました。

▲戦略設計の過程で整理された「課題の構造①」

石原:READYFORさんとご一緒する前は寄付者像もあやふやでしたが、戦略を立てていく中でお金がどこからどう流れてくるのか大枠が掴めた感覚がありました。そのおかげで事業価値という自分たちの武器を、どこでどう使えばいいのか見えるようになったのは大きな変化だと思っています。

▲戦略設計の過程で整理された「課題の構造②」

―3ヶ月に及ぶ議論の集大成として、ミッションステートメント「子育て社会を、頼れる空気感で満たしていく。」も策定しました。

上田:このミッションステートメントには、私たちが向き合う課題と事業価値が全て集約されています。今では様々な場面でこの言葉に支えられているのですが、特にこのミッションによって組織に一体感が生まれたと感じることが多いです。

石原:例えば、それまでは「自分はなぜここで働いているのか」という問いの答えが一人一人違っていたけれど、意思を統一するものができたおかげでmerry atticのメンバーが自分自身に価値を感じて働けるようになった。やっと組織が一つになったという感覚です。

▲戦略設計の過程で策定された「団体のステートメント」

戦略から実行へ。チームの立ち上げと資金調達の次の一歩


―戦略を実行に移すプロジェクトマネジメントのフェーズでは、団体の中にファンドレイジングチームを1から立ち上げました。READYFORはそのチーム組成もリードさせていただきました。

上田:振り返ってみても、もはや外部パートナーという感覚はありませんでした。例えば、第三者視点で評価して「ここが課題だからここに注力しましょう」という評論家的なやり方ではなく、私たち自身の成長度合いに合わせたレールを敷いてくれた。戦略設計から私たちのフェーズに合わせた支援をしていただいたことで、伴走支援という枠を超えてスッと組織の内側に入ってきてくれたように思います。

―とても嬉しいです。まずクラウドファンディングを実施して、約400万円の支援を集めましたが、感想を教えてください。

上田:率直に大変な部分もありましたが、クラウドファンディングは「なぜ寄付を集めないといけないのか?」「これからどんなmerry atticになるのか?」を各方面に説明するいい機会になりました。結果、たくさんの方が応援してくださった事が何よりありがたかったです。

石原: 支援者の応援コメントは本当に励みになりました。寄せていただいたコメントの中には、事業価値に共感してくれている内容も多くて、共感の輪が広がっていったという実感がありました。

―クラウドファンディングと並行して、他にも様々な施策を実行しましたよね。

上田: 「大こども食堂」というイベントをクラウドファンディングのプロモーションも兼ねて初開催したんです。普段から学童で実施している「こども食堂」の拡大版という位置付けで、当日は1000人以上の来場がありました。恒例行事にしていこうと今年2回目を実施しましたが、資金面でもマネジメント面でも自走できるくらいにメンバーが成長しました。私たちにとっては、これも大きな財産です。

石原:WEBサイトを全面リニューアルした事も成果の一つです。私たち団体の玄関口のようなものですが、今まではないに等しかった。やろうやろうと言っていたけれど手が出せなかったところを、READYFORさんにディレクションやデザインにも協力いただきリリースできました。

最近では採用にも活きていて「サイトを見て応募しました」という事も結構あるんです。今回、腹をくくって着手して本当に良かったです。


財源を安定させ、持続可能な事業を目指す


―merry atticさんの今後の展望について教えてください。

上田:始めた当初は赤字運営だったこどもショートステイ事業でしたが、京都市での取り組みをモデルに、東京都葛飾区でも新たな拠点を開設することになりました。しかも、今回は初めて行政の補助金が全額支給されます。自治体や行政の方と話をするうえで、課題の深掘りと事業価値の言語化は本当に役に立ちました。今後はこどもショートステイ事業のモデルを確立して、他の地域や団体が参入しやすい環境をつくっていきたいです。

石原:WEBサイトには決済ツールも導入して、寄付基盤の強化にも今まで以上に力を入れています。これまで「活動を支援したいけれど、方法がわからない」と言われてきました。応援や共感の気持ちの示し方を提示することができたかなと思っています。月額寄付や企業寄付という観点ではまだ道半ばですが、少しずつ共感や支援の輪を広げていきたいです。

上田:私たちのミッションは「子育て社会を、頼れる空気感で満たしていく。」ことです。READYFORさんと築いた基盤をより安定的な財源確保に繋げて、変化の激しい時代においても子育てを頼れる社会の実現を目指していきます。


資金調達を迷っている団体にこそ伝えたい、“はじめの一歩”のサポート力


―同じような課題を持っていらっしゃる団体さんへのメッセージはありますか?

石原:READYFORさんは私たちのこと、NPO側のことをよく知ろうとしてくれます。

NPOに限らず、外的な知識や考え方が入ってくるという事が、かえって自分たちの活動の足枷になるのではと考えている団体は多いと思います。でもREADYFORさんは、私たちが大事にしている意思を尊重しながらしっかり対話をしてくれます。だから「まずは一度、話してみる事」を心からおすすめします。

上田: READYFORさんには「資金調達の前にやるべき事」を教えてもらったと思っています。

「自分たちが本当に解決したい社会課題は何なのか。それにどう向き合っているのか」それを言葉にして、団体全員のものにしていく。ファンドレイジングはそこから始まるんです。それがREADYFORさんとならできる、少なくとも私たちはできたよと胸を張って言いたいですね。

取材:久田 伸(READYFOR ファンドレイジングサービス部門)

文責:鈴木 峻(READYFOR ファンドレイジングサービス部門)

撮影:戸谷 信博




担当 ファンドレイザー

久田 伸

エキスパートキュレーター / 准認定ファンドレイザー

千葉大学 教育学部卒。広告会社で企画・制作、CEO室立ち上げ、人事マネージャー、サービス開発責任者を経てREADYFORに参画。ファンドレイジングサービス部門の立ち上げから、サービス開発、組織開発に従事。国立科学博物館の「地球の宝を守れ」プロジェクトでは国内クラウドファンディングにおいて最高額・最高支援者数を記録*。(*2024年7月時点)

担当 ファンドレイザー

鈴木 峻

リードキュレーター / 准認定ファンドレイザー

明治大学 情報コミュニケーション学部卒。新卒で鉄道系広告代理店に入社。ショッピングセンターや鉄道関連施設などの年間販促企画の営業、企画、実施や、鉄道沿線のJリーグクラブとのコラボ企画などにも従事。2022年にREADYFORへ入社後は、ソーシャル領域のNPOや公益法人、医療機関、大学研究機関などのプロジェクトを幅広くサポート。

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